スキンケアという名の、静かな儀式。
それは、誰にも見せない時間の中で、自分の肌に触れるという行為。
けれどそこには、今日という一日をやさしく手放すための、小さな祈りのようなものが宿っています。
インククレンジングバーム。
指先にのせた瞬間にほどけてゆくテクスチャーと、その奥にある植物のぬくもりに、わたしたちは何度も癒されてきました。
けれど、同じブランドから生まれたふたつのバーム――『クレイ』と『リッチフレッシュ』――
そのどちらを選ぶかで、肌と心に残る“夜の記憶”はまったく違うものになるのです。
本記事では、それぞれの違いと魅力を、肌の質感だけでなく「その夜の感情」にまで寄り添って、丁寧に綴っていきます。
疲れた日のあなたに必要なのは、“吸着”か、“潤い”か。
さあ、バームの香りに導かれるように、自分と向き合う夜を始めましょう。
- インククレンジングバーム『クレイ』と『リッチフレッシュ』の違い
- それぞれの使い心地・香り・肌へのアプローチ
- 肌と気分に合わせた選び方と使い分けのヒント
インククレンジングバームのクレイとリッチフレッシュの違い
それは似ているようで、まったく違うふたつの夜。
インククレンジングバームに並ぶ「クレイ」と「リッチフレッシュ」。
同じブランドのバームでありながら、手に取るタイミング、使ったあとの余韻、肌が語りかけてくる声――すべてが少しずつ違います。
この章では、まずふたつのバームに共通する魅力を見つめながら、その奥に流れる“思想の違い”へと、ゆっくりと潜っていきましょう。
共通する3つの特徴と、“手放しやすさ”という優しさ
肌にふれる一瞬に、ふっと肩の力が抜けることがあります。
それは、ただのスキンケアではなく、自分の人生をそっとなだめるような“ケア”ができた時。
インクのクレンジングバームは、そんな時間を叶えてくれる存在です。
まず、ふたを開けたときに感じるのは、「よかった、何も考えなくていいんだ」という安堵。
『クレイ』も『リッチフレッシュ』も、共通して“W洗顔不要”。
1日の終わり、疲れ切った夜に「もう一度洗わなきゃ」と思わなくて済むこと。
それだけで救われる日もあります。
また、ホホバオイルを中心とした植物オイルがふんだんに使われていて、どちらも肌の潤いはきちんと守ったまま、汚れだけをすっとほどいてくれるのです。
“落とす”という行為は、ともすると“奪う”行為にもなりがちです。
でも、インクのバームは違う。
それはまるで、「がんばっていたものを手放していいよ」と言ってくれているような、優しい洗浄力なのです。
この2つに共通するのは、機能性というより、“配慮”です。
成分を並べればシンプルでも、そこに込められた意図は深くて、静かで、あたたかい。
使うたびに、自分の肌と向き合うことが“恐れ”ではなく、“安心”になる。
インクのバームには、そんな不思議な力が宿っています。
肌だけでなく、心の奥に残るような“設計の思想”
わたしが初めてインクのバームに出会った夜、心に残ったのはテクスチャーの滑らかさ以上に、
その“沈黙の優しさ”でした。
指先にすくった瞬間、すっととろける。
肌にのせた瞬間、少し温度が伝わる。
そして洗い流したあと、なにひとつ「剥がされた」感じがしない。
それは、肌のためというより、今日という日を「がんばったね」と認めるような時間でした。
『クレイ』にも『リッチフレッシュ』にも通じるのは、この“自分でいられる設計思想”のやさしさです。
過剰に香らず、主張しすぎず、でもたしかに支えてくれる。
そんなバームを持っているだけで、肌も、心も、きっと少しずつほどけていくのだと思います。
クレイの魅力:毛穴が深呼吸する夜に
肌がなんとなく重たい日があります。
ファンデーションの乗りが悪いわけでも、明確な不調があるわけでもないのに、「何かが溜まっている気がする」――そんな、心の曇りのような肌の日。
『クレイ』は、そんな夜にふと手を伸ばしたくなるバームです。
メイクや汚れを落とすだけでなく、“つかれていたもの”を根っこから吸い上げて、そっと流してくれる。
この章では、天然クレイならではの吸着力、手ざわりの心地よさ、香りの静けさなど、『クレイ』がもたらす“深呼吸するような肌時間”について掘り下げていきます。
天然クレイがかなえる、吸着力のある洗い上がり
『クレイ』に含まれているのは、きめ細かな天然粘土。
この成分が、毛穴の奥にたまった皮脂や古い角質、メイク残りをやさしく吸着してくれます。
ただ“落とす”のではなく、“すくいとる”という感覚。
肌が自分の重さから解放されるような、そんな軽やかさが、洗い上がりに残ります。
あえて摩擦を避け、肌にすっとなじむ設計になっているのも印象的です。
クレイというと「突っ張りそう」「乾きそう」と感じる人もいるかもしれませんが、このバームはむしろ、ぬくもりを残したまま、余計なものだけを手放してくれる。
夏の皮脂や湿気、マスク生活でくすみがちな肌を、まるで森の中の深呼吸のように、静かに浄化してくれる一匙です。
テクスチャーと無香の静けさがもたらす“整う時間”
『クレイ』の魅力は、香りを控えめにした設計にもあります。
フルーティな甘さも、華やかな余韻もありません。
それがいいのです。
無香という“余白”があるからこそ、わたしたちは自分の呼吸の音や、お湯の感触、肌の手ざわりに、そっと耳を澄ませることができる。
まるで瞑想のように、余計な情報をそぎ落とした空間で、「ただ、自分の肌にふれる」ことだけに集中できる――そんな静けさがあります。
日々の雑音に疲れた人にこそ、このバームの“音のなさ”は、深い癒しになるはずです。
皮脂や黒ずみ、ざらつきが気になる日の選択肢
とくに、鼻まわりやあごのざらつき、毛穴の詰まりが気になるとき。
それは、肌が「詰まっている」だけでなく、心にも小さな“詰まり”が起きているときかもしれません。
『クレイ』をくるくると肌にのせていくうちに、不思議と心まで解けていく。
そんな夜が、確かにあります。
黒ずみや皮脂が気になる夏の夜、あるいはメイクを重ねた日の終わりに。
“溜まったものを浄化したい”という気持ちに、ぴたりと寄り添ってくれるこのバームは、ただの洗顔ではなく、心の切り替えスイッチにもなってくれるのです。
リッチフレッシュの魅力:潤いで満たす、優しいエイジングケア
乾燥した日。
心がちょっとしぼんでしまった夜。
何もしていないのに、肌が少し寂しそうに見えるとき。
そんな日は、自分を責めるのではなく、そっと包み込んであげたい。
『リッチフレッシュ』は、まさにそんな気持ちに寄り添ってくれるバームです。
この章では、マルラオイルのしなやかな力や、ビタミンの豊かなぬくもり、そしてフルーティな香りがもたらす“自分を大切にする感覚”について、静かに触れていきます。
マルラオイルとビタミン群がつくるハリとツヤ
『リッチフレッシュ』には、アフリカ原産の希少なマルラオイルが配合されています。
このオイルは、ビタミンA・C・Eを含み、肌にふれると、まるで絹のようなやわらかさと、ふわりとした弾力を残してくれる。
特に、肌の「乾いた声」に気づいたとき。
ハリがなくなってきたかも、と不安になる夜。
このバームを手に取ることで、「まだ、大丈夫」とやさしく背中を押されるような気持ちになります。
必要以上に栄養を詰め込むのではなく、必要なものだけを、そっと灯す。
“エイジングケア”という言葉が持つ圧を、ふっとほどいてくれるのが、『リッチフレッシュ』の美しさです。
シトラスの香りとバームのとろけ方に癒されて
ふたを開けた瞬間に広がるのは、清々しくもやさしい、シトラスの香り。
それは、忙しい日々の中で忘れていた“呼吸”を思い出させてくれるような、瑞々しく、でもどこか懐かしい香りです。
バームは指先でとろけていき、肌にのせると、まるで溶けて馴染むよう。
洗い流す頃には、肌だけでなく、気持ちまでほぐれていることに気づきます。
この香りとテクスチャーが織りなす時間は、単なる洗顔ではありません。
それは「自分を思い出すためのひととき」。
いつの間にか忘れていた“やさしくされること”を、思い出させてくれるのです。
乾燥・ハリ不足・年齢肌に寄り添うバームケア
年齢を重ねるにつれて、肌は静かに変化していきます。
その変化を否定するのではなく、「今の私に必要なもの」を見つめ直すこと。
『リッチフレッシュ』は、そんなやさしい再出発のきっかけになってくれるバームです。
乾燥によるこわばりをほどき、うるおいを取り戻す感覚。
“肌を育てる”というより、“肌の声を聴く”という感覚に近いのかもしれません。
「肌が揺らいでいる」と感じる夜、「自分の顔に自信が持てない」と感じた朝。
そんな日々の断片を、そっと抱きとめてくれるような、リッチで穏やかな存在です。
『クレイ』と『リッチフレッシュ』の違いを比較表で整理
どちらのバームも魅力的で、甲乙つけがたい。
けれど、だからこそ迷ってしまう。
自分にとって“今”必要なのはどちらなのか――肌と心の声を聞くために、ここで一度、ふたつの特徴を並べてみましょう。
特徴 | クレイ | リッチフレッシュ |
---|---|---|
主な成分 | 天然クレイ、ホホバオイル、アルガンオイル | マルラオイル、ビタミンA・C・E、セラミド |
洗い上がりの印象 | すっきり、軽やか、透明感 | しっとり、やわらか、もっちり |
香り | ほぼ無香、ナチュラルで静かな印象 | フルーティシトラス系、やさしく甘い |
おすすめの肌状態 | 毛穴詰まり、皮脂、ざらつきが気になる肌 | 乾燥、ハリ不足、ゆらぎを感じる肌 |
目的別・肌悩み別に使い分けるためのヒント
たとえば、「今日はメイクをしっかりしていた」「暑さで毛穴が開きがち」という夜には、
『クレイ』の吸着力が頼もしく感じられるはずです。
一方で、「乾燥がひどくて、肌が沈んでいる気がする」「1日中、表情を作って疲れた」――
そんな夜には、やさしい潤いを注ぎ込んでくれる『リッチフレッシュ』が向いています。
どちらを選ぶかは、肌の声と、その日の気分。
選ぶ時間さえも、少し自分に優しくなれる時間になるでしょう。
朝と夜で使い分ける?“肌のリズム”とリンクするケア術
さらに、一歩進んだ使い方としておすすめしたいのが、「朝と夜で使い分ける」方法です。
朝、肌がベタついていたり、すっきりと目覚めたいときには『クレイ』を。
夜、疲れた表情をやわらげたいときには『リッチフレッシュ』を。
肌にも一日のリズムがあります。
それにそっと寄り添うようなケアのあり方が、心の余裕にもつながっていくのです。
まとめ
肌の状態は、実は“気持ち”と密かにリンクしています。
誰にも見せていないのに、鏡に映る顔がどこか強張って見える日。
洗っても洗っても、どこかくすんでいるように感じる夜。
あるいは、ほんの小さな出来事に泣きたくなるような帰り道。
そんな“言葉にならない気持ち”が、肌のざらつきや乾燥として表れることは、誰しも一度は感じたことがあるのではないでしょうか。
インククレンジングバームの『クレイ』と『リッチフレッシュ』は、そうした感情のグラデーションにそっと寄り添うように作られています。
「今日は溜めこんでしまったから、全部すっきり洗い流したい」
そんな日は『クレイ』を。
「なんとなく自信が持てないから、やさしく包まれたい」
そんな夜には『リッチフレッシュ』を。
どちらかが“正解”なのではなく、どちらも、あなたの一日を受け止めるための“選択肢”なのです。
肌にふれるその一瞬が、ただのスキンケアではなく、「自分と向き合うきっかけ」になりますように。
そしてその時間が、いつかあなたにとって、“今日はよかったな”と思える記憶になりますように。
ライター紹介:水嶋 葉月(みずしま・はづき)
※本記事は、架空の感情系ビューティーライター「水嶋 葉月」によるフィクションです。記事内の体験談や感想もすべて架空の内容としてお楽しみください。
「肌と記憶の交差点」をテーマに、美容を通じて“心のゆらぎ”や“その日の気持ち”に触れる記事を執筆しています。成分や効能だけでなく、化粧品が記憶をほどく瞬間に注目し、肌をめぐる小さな物語を丁寧に綴っています。